ワールドサッカーダイジェスト 唐突の感もある処分厳格化の真相1

ワールドサッカーダイジェスト

No201 8.18
唐突の感もある処分厳格化の真相


八百長事件でジェノアが、財政問題メッシーナトリノが、セリエAから除外される見込みとなった。今後は司法レベルで、是非を争うことになりそうだ。かつてない厳しい処罰の連続に、なにか理由があるのだろうか。



セリエAは3チームが降格、Bの入れ替わりは大規模に

本稿の執筆を始めるほんの1時間ほど前、イタリア・サッカー連盟(FIGC)の懲罰委員会は、ジェノア八百長行為があったとして処罰を下すと発表した。処罰は厳しく、セリエAからC1への降格に加えて、新シーズンは勝点マイナス3からのスタートになるという。こうして現存するイタリア最古のサッカークラブは、11シーズンぶりに復帰したばかりのセリエAから追放されるだけでなく、クラブ史上2度目となる3部リーグへの転落を余儀なくされそうだ。
イタリア・サッカー界を揺るがす由々しき事態は、これだけではない。7月26日には、FIGCの上位団体であるイタリア・オリンピック委員会(CONI)が、多額の税金を滞納しているメッシーナトリノセリエAから除外する決定を下している。CONIによるカンピオナートの最終登録審査も非常に厳しく、セリエBではペルージャサレルニターナが、C1、C2でも複数のクラブが登録を認められなかった。
新シーズンのカンピオナート(セリエA、B,C1、C2)がそれぞれどのような構成になるのか、現時点ではまったくわからない。論理的に考えれば、B降格クラブでもっとも順位が上がったボローニャセリエA16位/残留を賭けたパルマとのプレーオフで敗退)が、メッシーナに代わってAに戻ることになるだろう。
トリノに代わる昇格クラブはB5位のトレビーゾということになり、ジェノアに対する処分が確定すればB6位のアスコリに昇格の権利が与えられるはず。本来なら、A昇格プレーオフ(編集部・注を参照)でトリノに敗れたペルージャ(B3位タイ)が優先されてしかるべきだが、前述の通りCONIの審査を通っておらず、昇格どころか降格を余儀なくされそうだ。
[編集部・注/A昇格プレーオフ=セリエB3〜6位の4チームで昇格1枠を争奪。準決勝でアスコリを下したトリノ、トレビーゾを下したペルージャが決勝に進み、決勝でペルージャを下したトリノセリエA昇格の権利を獲得]
セリエBの入れ替わりは、さらに大規模なものになるだろう。登録審査で脱落したペルージャサレルニターナに代わって、C1降格番組のヴィチェンツァペスカーラが復帰を果たし、ボローニャがAに戻れば、やはり降格組のカタンザーロがBに戻ることになる。ちなみにメッシーナは、「ペトルッチ裁定」と呼ばれる救済ルールの適用を拒否したため、Bに登録するのも不可能だ。
ペトルッチ裁定」とは。CONIのジャンニ・ペトルッチ(Giovanni Petrucci)会長が2年前に発案したもの。あるクラブが破産しても、別の経営者が権利を引き継げば、所属選手と新たな契約を交わし、ひとつ下のカテゴリーから再出発できる──というのがその内容だ。要するに、歴史と伝統を誇るクラブを簡単には消滅させぬよう、危機に瀕するクラブを救済する仕組みといっていい。
破産の事実を認めなかったメッシーナの場合は、定められた期限までに裁定の手続きをしていない、当然、救済の恩恵を受けることもないわけだ。