FUTBOL MUNDIAL #686●特集3:ベイタル・イェルサレム

●特集3:ベイタル・イェルサレム
政治、宗教、スポーツが絡み合うベイタル・イェルサレム


イスラエルリーグのディフェンディングチャンピオンマッカビ・ハイファ(Maccabi Haifa F.C.)
2月初め、ホームにベイタル・エルサレム(Beitar Jerusalem FC)を迎えました
ベイタルは今シーズンの首位。リーグの勢力図を塗り替えつつあります



1936年に創立したベイタル
降格と昇格を繰り返す不安定なチームでした
タイトル獲得も数える程で財政難に陥った事もあります


人気では1番ですが優勝回数は4度。国内では6番目の数字です
トップに立つマッカビ・テルアビブ(Maccabi Tel Aviv FC)の18度には遠く及びません


今のチームは自信に満ちています
クラブが新時代を迎えたと信じているからです


2005年ロシア生まれのユダヤ系実業家アルカディ・ガイダマック(Arcadi Gaydamak)がオーナーになると、ヨーロッパ屈指のビッグクラブに育てると宣言し、リーグ最多の資金を投入しました
イスラエル在住のガイダマックは、武器の不正取引でフランスでは逮捕状を出される等お騒がせの人物
それでもベイタルは上向きです
経営危機を脱し、イスラエル代表のシモン・ゲルションの様な有力選手を獲得しています



shimon gershon
「ベイタルの方からかなり熱心に誘ってもらいました。昨シーズンの終わり頃に交渉したんですが、その時も凄く真剣だったので自分にとってこの移籍は運命なんだと思う様になったんです。心の声に従って決断して、皆が憧れるイスラエル屈指のクラブに入りました。ここはサポーターも多いですし、活気に溢れていますからねぇ」




オーナーも観戦する中まずは前半10分、18歳のストライカー、トト・タムズ(Toto Tammuz)がアピールします
ナイジェリア生まれですが3歳からイスラエルで暮らしているタムズ
イスラエル代表でもプレーする若きエースがハイファのディフェンス陣を翻弄しました


41分にこの日2点目
さらにサポーターが追加点を喜んでいる間にディフェンダーのトメル・ベン・ヨセフ(Tomer Ben-Yosef)がゴールをあげ3対0とします
前半で3点リード。ベイタルは大満足です




エルサレムは紛争と隣り合わせ
イスラム教、ユダヤ教キリスト教と3つの宗教で聖地とされている為、分断された都市は絶えず緊張状態にあります


アラブ系とユダヤ系の人々は共存を試みていますが、無差別攻撃がそれを台無しにしています
ベイタルも紛争の脅威の被害者です


ヨッシ・ミズラヒ監督に聞きます



yossi mizrahi
「開幕当初は外国人選手を連れてくるのに苦労しました。北部で戦争があったので多くのプレーヤーがイスラエルへ来たがらなかったんです。以前にも同じ様な事がありました。エルサレムで毎日の様に爆撃が起きていた頃です。でも今では沈静化してきているので楽になりましたよ。金銭面で良い条件を出せば力のある外国人選手を獲得出来るはずです」



イスラエルではあらゆる機関が政治的な影響を無視出来ません
エルサレムでもそれは同じ


ガイダマックはベイタル初のアラブ系選手の獲得を考え、イスラエル代表のアバス・スワンに白羽の矢をの立てました
しかし移籍は実現出来ませんでした
チーム名のベイタルは30年代のシオン主義の活動に由来している為、サポーターの多くは今でもイスラエル至上主義者


右派のリクード(Likud)党を支持しています



abbas swan
「ベイタルとの契約はほぼ完了していました。でもその後状況が一変したんです。僕がクラブと正式に契約を結ぶはずだったのと同じ週にベイタルのサポーターがクラブのフロントに圧力を掛けました。その後移籍話はご破算になったのです」



yossi mizrahi
エルサレムが平和になって人々がもっと寛容になれれば良いんですがね。ベイタルもあらゆる人種や宗教の選手を受け入れてそれぞれが認め合える様なチームになって欲しいんです。でもセキュリティの面からも今の状況では難しいでしょうねぇ」




後半は低調な内容でした
前半で3失点したハイファは闘志を失い、リードするベイタルのチャンスも数える程
ディフェンダーのガル・アルベルマン(Gal Alberman)のヘッドも決まりませんでした
最後まで元気一杯だったのはベイタルのサポーターだけです


ミズラヒはガイダマックがオーナーになってから2年間で6人目の監督です
直ぐに結果を出さなければ容赦無く交代させられます
前任のオズワルド・アルディレス(Osvaldo Ardiles)はチームを首位に導いたにも関わらず僅か5ヶ月で解任されました


フロントは何かと落ち着きませんがミズラヒはマイペース
生まれも育ちもエルサレム。ベイタルの守護神として17年もプレーしました
このクラブの事は誰よりも分かっています



yossi mizrahi
「私はガイダマックオーナーの所へ毎日行ってご機嫌伺いする様なタイプではありません。話し合いは何度もしていますがベイタルに関して自分なりの意見を述べています。オーナーは大金を投資しているんですから現場にプレッシャーをかけるのも、チームのレベルアップを願うのも当然です。でもこの世界に魔法なんてありません。成功には忍耐が必要なんですよ。ベイタルにはそれが足りませんけど私も何とか頑張ろうとしていますよ」




過去6シーズンで5度も優勝していたハイファを一蹴したベイタル
選手もサポーターもこの一勝の重みを感じているはずです
これで2位とは4ポイント差、残りは11試合
今シーズンリーグ優勝を果たせば来シーズンはヨーロッパの舞台が待っています







Beitar Jerusalem FC
http://www.bjerusalem.co.il/
http://en.wikipedia.org/wiki/Beitar_Jerusalem_FC



Yossi Mizrahi
http://en.wikipedia.org/wiki/Yossi_Mizrahi



Arcadi Gaydamak
http://en.wikipedia.org/wiki/Arkadi_Gaydamak



Shimon Gershon
http://en.wikipedia.org/wiki/Shimon_Gershon



Toto Tammuz
http://en.wikipedia.org/wiki/Toto_Tammuz



Tomer Ben-Yosef
http://en.wikipedia.org/wiki/Tomer_Ben-Yosef



Gal Alberman
http://en.wikipedia.org/wiki/Gal_Alberman



Osvaldo Ardiles
http://en.wikipedia.org/wiki/Ossie_Ardiles




Maccabi Haifa F.C.
http://maccabi-haifafc.walla.co.il/ts.cgi?tsscript=e/index
http://en.wikipedia.org/wiki/Maccabi_Haifa_F.C.



Maccabi Tel Aviv FC
http://en.wikipedia.org/wiki/Maccabi_Tel_Aviv_FC




リクード
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%89






Jスポーツ
http://www.jsports.co.jp/program/info/17420.html