FUTBOL MUNDIAL #697●特集2:ザンクト・パウリ

●特集2:ザンクト・パウリ
独自のアプローチでサポーターに人気の、ドイツのザンクト・パウリ。

ハンブルク( Hamburg)はドイツの主要な港町
埠頭とエルベ川(die Elbe)に囲まれたザンクトパウリ(Sankt Pauli)地区は昔から多様な文化を持つ街です


1980年代地区内のハーフェンシュトラッセ(Hafenstrasse)エリアに再開発の波が押し寄せた時には、学生や知識人、急進派やパンク系まで加わって反対運動が起きました
団結のシンボルとして使われたのが髑髏マーク
資本主義に反旗を翻し小さなコミュニティを守ろうとしたのです


そしてこの髑髏マークをクラブのロゴにしているのがザンクトパウリ(FC St. Pauli)
サッカーと政治の融合を最初に掲げたのはここのサポーターでした



norbert gotze
「今のザンクトパウリのイメージはあの頃に作られたんだと思います。ハーフェンシュトラッセの選挙があってスタジアムにはサポーターが押し寄せていました。サッカー界にそれまでとは違うイメージを齎したのはザンクトパウリです。当時多くのクラブがフーリガンの問題を抱え暴動等に苦しんでいました。そして右派政党はそういうサポーターに取り入り政治のバランスを変えようとしていたんです。そんな中ザンクトパウリのサポーターはこういう動きを止めさせるのに大きく貢献したんですよ」




ザンクトパウリはドイツで初めて右翼を締め出したクラブでもあります
こうした背景を持つクラブは次第に人気を集めます
80年代には1600人だった平均入場者数が90年代後半には1万5千人になりました


現在は3部相当のカテゴリーでプレーしていますが、殆どのクラブが2千人を集めるのに苦労する中、ミレルントア・シュターディオン(Millerntor-Stadion)は別世界
試合というよりパーティーの様なお祭りの様なムードです
ゲームが終わってもサポーターは中々帰りません



sandra schwedler
「ここはタダのクラブでは無くて、ご近所付き合いや政治的な活動とも関係しています。スタジアムで90分過ごして直帰る訳じゃありません。人生の全てと言っても良い位ですし、皆ザンクトパウリの事で大忙しです」




今シーズンは3試合を残してトップ
2部リーグへの昇格も目前です
これもサポーターの後押しのお陰でしょう


元選手でジャーナリストに転進したブトイエ・ローゼンフェルトは人気をこう分析します



butje rosenfeld
ザンクトパウリが地元の人達に人気なのは普通じゃない所なんです。その根拠は色々ありますが、ワーキングクラスのクラブで所謂負け犬ですしねぇ。実社会がとても厳しくて要求過多になると人にはこういうオアシスが必要になるなんだと思うんです。良い事ばかりではありませんが、少なくともサポーターは普通じゃない事をとても楽しんでいますよ」



この30年昇格と降格を繰り返しているザンクトパウリ
多くの成功を収めているハンブルクHamburger SV)の影に隠れていますが
94−95シーズンから2シーズンは1部リーグにも所属していました


ミッドフィルダーのティモ・シュルツはサポーターはどんな時でも何時も味方だと言います



timo schulz
「何人かのサポーターとはプライベートでも仲が良くて、そういう付き合いを楽しんでいますよ。でも基本的にうちのサポーターはのんびりしていて、負けても怒ったりしませんし、ずっと支えてくれて声援を送ってくれています。毎試合1万5千人が集まって試合の後はキーツ(Kiez)へ夜遊びに行くんです。だから彼らのパーティが盛り上がる様にホームゲームの時は僕らも特に頑張らないとねぇ」



キーツ(Kiez)とはスタジアムに隣接する歓楽街です
60年代にビートルズが完成させたと言われる場所でお金さえ持っていれば何でもありの世界です


ここで成人用映画館を2つ所有しているのがザンクトパウリの会長コーニー・リットマンです



corny litmann
「魅力的なプレーをする事以外に現状を打破する方法はありません。スタジアムが改装されてもクラブのアイデンティティは維持します。ザンクトパウリ独特のこの雰囲気は守っていきますよ」



新スタジアムの建設は今年中にスタートする予定です
ただ多くのサポーターはクラブの前進を望みつつもチケット代の高騰には反対しています



roger hasenbein
「サポーターの多くは3部に居るという現実に不満を持っています。だから昇格しなければと思っているんです。でも私達の理念も守らなければいけません。その為にはクラブが儲け主義に走るのを止めようと戦っているドイツ中のサポーターと協力していくべきです。私達は立見席からクラブを応援していますし、そんなに裕福ではありません。例えばイングランドの様にチケットの値段が高くなり過ぎて締め出しをくらうなんていうのは御免です」




大切な事はサポーターがホームで楽しい時間を過ごせる事
クラブとサポーターの間にはサッカーを超えた絆があるはずです






FCザンクトパウリ
http://www.fcstpauli.de/
http://ja.wikipedia.org/wiki/FC%E3%82%B6%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%AA




Millerntor-Stadion
http://de.wikipedia.org/wiki/Millerntor-Stadion



Kiez
http://en.wikipedia.org/wiki/Kiez



レーパーバーン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%B3



Corny Littmann
http://de.wikipedia.org/wiki/Corny_Littmann





エルベ川
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%99%E5%B7%9D






FUTBOL MUNDIAL #682●特集4:カールスルーエ
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20070217



FUTBOL MUNDIAL #579●特集1:ボルシア・ドルトムント
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20050307



FUTBOL MUNDIAL #576●特集4:シュトゥットガルト
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20050217



FUTBOL MUNDIAL #574 特集2 アレマニア・アーヘン
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20050123






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http://www.jsports.co.jp/program/info/18421.html