FUTBOL MUNDIAL #765●特集1:FCルチ・エネルギアウラジオストック
地理的には離れていても一つの国
ロシアの極東部にある沿海地方の州都ウラジオストック(Vladivostok)
西は中国の国境に面し、半島部分は日本海に突き出しています
1860年にロシアの海軍基地として開港されたウラジオストック
東方の領地という意味のウラジオストックはロシア艦隊の太平洋基地がある軍港都市です
港はウラジオストックの心臓部
軍事上の理由ばかりでは無く、人口の半数近くが海運業に従事しています
金角湾(ザラトイ・ログ)には日本の車や中国の物資を積んだ貨物船が引っ切り無しに入港するロシア極東部の主要都市なのです
ウラジオストックはシベリア鉄道の終点としても有名です
1891年に建設が始まったシベリア鉄道は、モスクワとロシアの極東部を結ぶ全長9288kmの鉄道です
夏は穏やかな気候のウラジオストック
ディナモ・スタディオン(Dynamo Stadium)はルチ・エネルギア・ウラジオストック(FC Luch-Energiya Vladivostok)のホームスタジアムです
1958年に創設され、2005年からロシアプレミアリーグに所属しているルチ
リーグの基準を満たす為にスタジアムは改築されました
しかしウラジオストックでのゲームは相手チームからは歓迎されていないようです
vitaly bulyga
「相手チームは皆時差もあるし、ピッチも最悪だと文句を言いますね。でもこの街の人達はサッカーだけが楽しみなのです。皆ゼニト・サンクトペテルブルク(FC Zenit Saint Petersburg)やスパルタク(FC Spartak Moscow)やチェスカ(PFC CSKA Moscow)がここでプレーするのを心待ちにしています。ルチ・エネルギアが存在しなかったら、この街の人達は一体何をして暮らしていたのか想像も出来ませんね」
次の試合は文句は言われません
モスクワのルジニキ・スタジアム(Luzhniki Stadium)で行われるからです
ロシアプレミアリーグのクラブの大半はモスクワやさらに遠くの都市を本拠としている為、ルチにとってアウェーゲームは楽ではありません
ルチの大変さは他のクラブの比では無いと言います
alexey fischenko
「ウラジオストックの位置を見てください。他の対戦相手は皆こんな極東の街まで来たいとは思いません。でも皆一年に一度チャーター機で来れば良いだけの事です。食事もタイミングも皆ちゃんと計算されており、チャーター機には50人程しか乗っていません。でもルチは1シーズン中に15回も遠征しなければなりません。それも普通の民間機でですから大変なんです」
スパルタク・モスクワ(Spartak Moscow)戦は次の日曜
モスクワ時間の午後6時キックオフです
十分な準備が必要な相手です
試合の3日前、チームは最終トレーニングを行う場所へと移動しました
18:00
移動後の選手の体調を十分に考慮し、トレーニング内容は綿密に計画されます
それでも移動の多さや地理的な問題からルチでプレーしたいという選手はあまり多くはいません
これがルチのクロアチア人監督、ゾラン・ブリッチの悩みの種です
zoran vulic
「外国人選手はウラジオストックが何処にあるかなんて正直言って分かっていないのでいいんですが、ロシア人選手は違います。こんな所でプレーしようと思う選手はそうはいないんです」
ルチでのプレーを選んだチェコ人ゴールキーパーのマレク・チェフに聞きました
marek cech
「長旅に慣れるなんて事は実質不可能だと思います。体調が狂ってしまうのは致し方の無い事ですね。何とか上手く対処していかなければなりませんが、そう簡単に出来る事ではありません。とにかくもう出来る限りの努力をするまでなんです」
この翌日選手はのんびりと時間を過ごしていますがスタッフは大忙しです
11:18
アレクセイ・フィシュチェンコはこの日の夜の航空券を再チェック
小さなミスも許されません
13:11
選手だけ飛行機に乗れば良いという訳ではありません
ユニフォーム等一式を忘れたら一大事です
17:01
出発の時刻が迫ってきました
dmitry smirnov
「モスクワでのスパルタク戦は厳しい試練となります。でも良い試合をして良い結果を出して戻りたいと思っています。モスクワの大勢の観客の前でスパルタクやチェスカと戦えるのはロシアのサッカー選手にとってはこのうえない喜びですからね」
17:12
ウラジオストックを発った選手達
また旅の始まりです
18:00
(空港のカウンター)
19:56
(離陸)
21:12
(機内でトランプする選手)
00:06
(本やPSPで遊ぶ選手)
03:03
(眠る選手)
04:49
選手達を乗せた飛行機がモスクワのドモジェドヴォ空港(Domodedovo Airport)に着きました
7つの国際標準時刻を越え金曜の夜に逆戻りです
21:49
18:00
翌日はルジニキ・スタジアムで最終調整を兼ねたトレーニングが行われました
旅の疲れを取り体調を整えなければなりません
zoran vulic
「5日毎に我々はモスクワかあるいはその近辺の都市で試合を行っています。この事はプレーや試合結果に大きく影響しています。戦力的にはかなり高いチームだと思いますが、長旅の疲れから実力に見合った結果を出せずにいます。ウラジオストックがもう少しモスクワに近かったら何の問題も無かったんですがね」
17:54
ほぼ24時間後の日曜日
スパルタク・モスクワ戦が始まりました
18:00
今シーズンはまだアウェーで勝ちの無いルチ
シーズンも後半戦です
現在最下位から3番目、このあたりで何とか結果を出したい所でした
しかし前半終了間際、ラドスラブ・コバチ(Radoslav Kov〓〓)のゴールが決まってスパルタクが先制しました
さらに後半21分にはアレクサンドル・プルドニコフ(Aleksandr Prudnikov)のゴールで2対0
さらにマレク・チェフが退場になりました
代わったイゴール・シェフチェンコ(Igor Shevchenko)もサントス・バティスタ・モザルト(Mozart Santos Batista J〓nior)のPKを止める事は出来ませんでした
アウェーでの連敗記録をさらに更新してしまったルチ
1部リーグ残留の為にはいよいよホームでの成績が重要になってきました
敗戦の後の帰途はとても長く疲れるものです
FC Luch-Energiya Vladivostok
http://www.luch-energy.ru/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%AF
Zoran Vuli〓
http://en.wikipedia.org/wiki/Zoran_Vuli%C4%87
Marek 〓ech (goalkeeper)
http://en.wikipedia.org/wiki/Marek_%C4%8Cech_(goalkeeper)
Radoslav Kov〓〓
http://en.wikipedia.org/wiki/Radoslav_Kov%C3%A1%C4%8D
Aleksandr Prudnikov
http://en.wikipedia.org/wiki/Aleksandr_Prudnikov
Igor Shevchenko
http://en.wikipedia.org/wiki/Igor_Shevchenko
Mozart Santos Batista J〓nior
http://en.wikipedia.org/wiki/Mozart_Santos_Batista_J%C3%BAnior
Spartak Moscow
http://en.wikipedia.org/wiki/FC_Spartak_Moscow
Dynamo Stadium (Vladivostok)
http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamo_Stadium_(Vladivostok)
Russian Premier League
http://www.rfpl.org/
http://en.wikipedia.org/wiki/Russian_Premier_League
FC Zenit Saint Petersburg
http://en.wikipedia.org/wiki/FC_Zenit_St._Petersburg
FC Spartak Moscow
http://en.wikipedia.org/wiki/FC_Spartak_Moscow
PFC CSKA Moscow
http://en.wikipedia.org/wiki/PFC_CSKA_Moscow
ザラトイ・ログ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%A9%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%82%B0
シベリア鉄道
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A2%E9%89%84%E9%81%93
ドモジェドヴォ空港
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A2%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%89%E3%83%B4%E3%82%A9%E7%A9%BA%E6%B8%AF
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http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20070727
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http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20061012
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http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20050901