FUTBOL MUNDIAL #602●特集4:ジェフ・ト―マス

●特集4:ジェフ・ト―マス
イングランド代表、ジェフ・トーマスの新たな挑戦をレポート。


毎年この時期に開催される自転車レース、ツールドフランス
3週間に渡って3607kmを走破するこのレースは、生死を分ける様な大病を患った人には、お薦め出来る様なものではありません




geoff thomas
「2003年の7月3日に偶々血液検査を受けたのですが、その時医師には6週間後に結果を知らせると言われました。でもその2時間後に電話があって何か重大な病気を患っている可能性がある事を告げられたのです。その翌日さらに詳しい検査を受けて、自分が白血病だという事が判明しました」




以前プレミアリーグでプレーしていた40歳のイギリス人、ジェフ・トーマス
クリスタルパレス等7つのクラブで250試合?550試合?に出場
イングランド代表としても9試合に出場した経験を持ちます



白血病の宣告を受け2年が過ぎました
現在は病状も安定していますが、完治するには後5年かかると言われています
そんなトーマスは昨年、友人との話から新たな夢を持ったのでした



geoff thomas
クリスタルパレスの熱狂的サポーターであるニール・アシュトンという名のジャーナリストがツールドフランスのコースを走りたいと私に言ったのです。冗談の様な発言ですが彼はことスポーツに関しては真面目な人間です。ツールドフランスのコースを走る為に身体も鍛えています。その時に私も参加できたらと思ったのです。実現出来れば反応も大きいでしょうし、白血病の研究の為の募金も募る事が出来るかもしれません。それから色々考えて決心も固めたのです」




白血病の研究資金として20万ポンドを集める事が最大の目的です
例えその夢が実現されなくても彼の白血病研究に対する貢献は少なくありません




cathy gilman
「ジェフが多額の資金を私達団体に投じてくれているだけでなく、この半年間だけでも団体の知名度アップに大きく貢献してくれています。私達にはテレビや新聞広告に大金を費やす余裕はありません。全て研究資金として使いたいですからね。そんな中ジェフが半年に渡って宣伝活動をしてくれたのです。その効果は絶大でした」




ツールドフランスで6度優勝しているアメリカのランス・アームストロング
癌を克服した彼の自伝を読んだ事でトーマスは辛い治療にも耐えられたと言います




geoff thomas
「大いに勇気を貰いましたね。生きる可能性は15%と言われながらも癌を克服した人です。私と同じで彼も癌の兆候に気付かず、大分進行してから告知されました。彼も最初は絶望的だったはずです。でも癌を克服してまたツールドフランスで優勝したいという風に、前向きな考えに変わっていったのです」




先月末アームストロングがツールドフランス7連覇に向けたレースをスタートする前、トーマスは全く同じコースを走る事に挑戦します


イングランドでは友人や元チームメートが彼の検討を祈っていました




nigel martyn
クリスタルパレス時代のトーマスを良く覚えています。出場する試合全てに110%の力を出し切る選手でした。重病という大きな苦難にも遭遇しましたが、決して挫ける事無く立ち向かっています。そして今ではツールドフランスのコース完走という信じられない様な夢に向かって全力疾走しています。彼の勇気には脱帽ですね」




iain dowie
「ジェフは素晴らしい選手でした。ツールドフランスのコースを完走出来たら最高ですね。彼には36名の選手と優秀なスタッフが付いていますから必ず走り遂げてくれる事でしょう」




7月10日、ジェフは第11ステージのコースである、クールシュベル(Courchevel)〜フランスアルプスのビリアンソン(Briancon)まで173kmに挑戦しようとしていました
朝食を取った後は自転車とサポート用の車の整備です




geoff thomas
「少し疲れています。仲間の1人は食中毒にかかってしまったようですね。私も彼と同じ食事を取ったので、調子が上がりません。正直言ってこのコースはあまり走りたくありませんが、でもやらなければなりません。走り終えて早くホテルに入りたいですね」




封鎖された道路を走るプロ選手とは異なり、トーマスはパリへ向かう車やバイク、キャンピングカー等と一緒に走らなければなりません
しかしドライバーも気を使った運転をしてくれます。景色を楽しむ事も出来ました
ゆっくり昼食の休憩を取る事も出来ます



ジェフの調子はどうでしょう



neil ashton
「そうですね。素晴らしいですよ。日を追う毎に走りが良くなっていますねぇ。彼の勇気とパワー、そして決意には本当に脱帽です」




チームのスター的存在となったトーマス
勿論1人でやり遂げられる事ではありません




geoff thomas
「上り坂ではチームメートが私の先を行って引っ張ってくれます。下り坂は問題無いのですが登り坂ではチームメートの助けが必要です。彼らの存在が私を奮い立たせてくれるのです。本当のチームの様に上手くいっていますね」




それはこの日最大の登り坂、ガリビエ峠(COL DU GALIBIER)で証明されました
これまでのコースとは異なり、アルプスの頂上へ向かうコースは一本しかありません
海抜2000mの地点で天候が悪化、気温は3度まで下がりました。しかし諦めません


午後6時頃頂上に到着
クールシュベルを出発してから13時間で見事第11ステージ制覇です
3日後にはランスアームストロングが同じコースを半分の時間で走ります


トーマスのツール挑戦のニュースはあっと言う間に広がり、インタビューの依頼数は急増しました



白血病研究の為の募金は既に10万ポンドを超えています
詳細を知りたい方はジェフトーマス.comへアクセスしてみて下さい




geoff thomas
白血病研究を広め資金を集めるには最良の方法だと思います。個人的な事ですが一年前の私は犬の散歩に出るのも大変な状況でした。今でもちょっとした事で息切れする事がありますが、ツールのコースを完走出来るかもしれないという思いが、私にとって生きる糧になってくれているのです。パリに到着した日は私にとって最高の日となるでしょうね」





ジェフトーマス
http://www.geoff-thomas.com/





ツールドフランス2005
http://fr.wikipedia.org/wiki/Tour_de_France_2005





Jスポーツ
http://www.jsports.co.jp/program/info/8407.html