Football Business3 ユベントス 放映権問題 ロミーガイの改革Ⅲ

放映権問題
ロミーガイの改革Ⅲ




1992年、世界のメディア王マードックプレミアリーグの独占放映権を通常の5倍もの値段で買い取った事から、ヨーロッパのサッカーシーンでは放映権の暴騰が始まりました
予想だにしなかった程の放映権収入を得る事になった各クラブ
しかしそれはクラブの放漫経営を生み出し経営破綻に繋がっていったのです




ロミー・ガイ
「1999年の法律の改正でチームはメディアと直接放映権の交渉を行い放映権料を受け取れる様になりました。これによりビッグクラブは莫大な収入を得たのです」



ユベントスが得る放映権料も莫大なものです
セリエAの放映権料だけでもその額は実に6500万ユーロ、86億円にものぼります


ユベントスの収入内訳を見てみるといかに放映権料の占める割合が大きいかが分かります
しかしこの傾向には問題が




ロミー・ガイ
「矛盾している様に聞こえるかもしれませんがテレビの放映権料の高騰は多くのチームに問題を引き起こしてしまったのです。考えても見て下さい。突然思っても見なかった莫大な収入が降って沸いたんですよ。何処のチームも嬉しい悲鳴をあげましたが多くのチームがまともな経営を出来なくなったのも肯ける話です。近年ローマの2つのチームがスクデット獲得の夢を果たしました。しかし、彼らがスクデットを獲得出来たのは莫大な放映権料の収入を選手補強の為に全て投資したからなのです。これではクラブ経営も何もあったもんじゃありません。莫大なお金を選手市場に注ぎ込んだツケは直に問題として表れました。その問題とは選手市場のデフレです。物凄い額のビッグマネーが飛び交い、選手たちの移籍金や年俸を想像もつかない金額にまで引き上げてしまったのです」




各クラブは放映権料による収入を背景に有名選手の引き抜きを始め、チーム強化の為に法外な値段で選手を取引し始めました
これが選手市場にデフレの時代を築いてしまったのです




ロミー・ガイ
「近年になって選手と所属チームの関係は変わってきています。選手市場で移籍金や年俸が高騰した為変わらざるをえなかったのです。サッカー界が選手に多額のお金をかけていた所謂バブルの時代にはその好景気がずっと続くものだと皆が思っていました。しかし選手を確保する為多額のお金を使いコストがどんどんかかる様になり、遂にバブルは弾けてしまったのです。その影響は計り知れません。何故なら選手にかかるコストは毎月の給料だけではないからです。選手を買い取った時の莫大な移籍金をバブルが弾けた後にも払い続けなければならないのです」




放映権料の高騰はクラブに不健全な経営をもたらし選手市場の暴騰を招いてしまいました
この皮肉な結果がクラブチームの財政を逼迫し経営破綻を招いてしまったのです



果たしてユベントスはこの危機的状況をどう乗り越えようとしたのでしょうか




ロミー・ガイ
「映画会社が映画を作って莫大な利益を上げるのと同じように、クラブチームはサッカーの試合というエンターティメントを作り出し、メディアに供給し放映権料を貰うのです。その価値は凄いものです。ですからチームにメディアから多くのお金が入るのは正しい事だと思います。但しその多額のお金をチームが上手く使う事が必要なのです。要するに入るお金と出て行くお金のバランスを取りながら健全にチームを経営していく事が最も大切な事なのです。トップレベルの選手に高い年俸を払うのは良いのですが、その選手がいかにチームに貢献し、どれぐらいのお金がチームに戻ってくるのかを冷静に判断しなくてはなりません。大切なのはバランスです。そのバランスを考えた上で選手に払える年俸等を考えるべきなのです。私は常にそれを気にしています」




コストのかかる選手がチームにどれだけ貢献しているのか
勝利をもたらすだけでは無くチームの人気を高めたり、グッズの売れ行きを伸ばしたり、ビジネスにおいてはそういう事も計算に入れなければならないのです



近年ユベントスではルチアーノモッジを中心に選手の獲得や放出のプランを立てています
コストのかかる有名選手をピーク前に放出し高額な移籍金を手にする。そんな方法も取られているのです
さらにロミーガイは混乱するサッカー界において異例の決断を下します
クラブチーム救済法を使わずに負債を一括で返済したのです



イタリアクラブチーム救済法
経営悪化を救済する為、クラブチームが抱える負債の償却を複数年に渡って認める法律




ロミー・ガイ
「イタリアにはクラブが抱える負債を複数年に渡って返済出来る法律があります。その返済期間が最近10年から5年に短縮されてしまったのです。これによって多くのクラブが将来経営破綻を起こすに違いありません。しかしユベントスは主力チームの中で唯一その救済方法を使わなかったのです。負債を先送りするよりも負債を無くし、経営状態を健全化する事を私は選択しました。確かに数年間はこの影響で財政的に困るでしょう。しかし将来的には絶対にこの方法が正しかったと思えるはずです。ゲームに勝利する事と経営を健全に保つ事は全く同じ事だと私は思うのです。何事も先送りにしていては次のビジョンが見えませんからねぇ」




負債を無くし経営基盤を確固たるものにしたユベントス
こうする事で莫大な放映権料収入を別の事業に回す事も可能になったのです




ロミー・ガイ
「幸いにもユベントスは莫大な放映権料を経営に活かし、様々な方法で活用する事が出来ました。現在は衛星放送にも参入し、ケーブルテレビや地上デジタル放送でもユベントスのゲームを楽しむ事が出来ます。他にもインターネットのブロードバンドや携帯電話による放送にも携わっています。我々は莫大な収入を新規分野に活用した事で恩恵を被る事が出来たのです」




さらにロミーガイは海外のメディアマーケットにも目を向けています




ロミー・ガイ
「海外は我々にとって大きなマーケットです。マスメディアでの放送が増えた事でイタリアサッカーは毎週平均80カ国で見られています。毎週の平均視聴者は凡そ2億人にものぼり、重要な試合では最高で15億人にも達する事もあるのです。チャンピオンズリーグといった重要な試合もそうなのですが、イタリアサッカーは常に世界中のメディアで大きく放送され、今現在も放映権市場の中心なのです」




莫大な金額を生み出す放映権とそれが生んだ経営破綻
大きなお金を動かすには緻密な計画が必要になります




ロミー・ガイ
「まだまだイタリアサッカー界には浸透していませんが、これからは綿密な経営計画とそれを実行していくプロフェッショナルな経営努力が必要だと思います。ユベントスはここ10年間で6つのスクデッドと国内外の様々なチャンピオンシップを獲得しました。クラブの経営が上手くいっているからこそチームも強くなっていると私は信じています」





放映権で得た収入を長期的で緻密な計画の下、無駄にする事無く使えばチームは強くなる
それはまたクラブを有名にし、有名になる事によって放映権収入が増えていく
この循環こそがロミーガイが目指す健全経営なのです
1企業として日々成長していくユベントス



ロミーガイによる3つの改革により、ユベントスセリエA最優良企業となりました
しかし、それでも新たな挑戦は続くのです