FUTBOL MUNDIAL #607●特集1:ロシアサッカー事情

●特集1:ロシアサッカー事情
このところロシア革命さながらの変化が起きているロシアのサッカー事情をレポート。

この所ロシア革命さながらの変化が起きているロシアサッカー
新たな資金が注ぎ込まれクラブの基盤も整えられています
一部の選手の年俸はスペインやイングランドに肩を並べ外国人選手も増えました
人気の移籍先は首都モスクワ
トップリーグ7つのクラブの本拠です



具体的な変化についてCSKAモスクワのバレリー・カザエフ監督に聞きます




valery gazzayev
「サッカーへのアプローチが大きく変わりました。私に言わせれば全く妥当なやり方になったんです。よりプロらしい理想的な形ですねぇ。設備をしっかり整えて良い選手を選んでいますし、全てが上手くいっています。そのお陰で私達もピッチで素晴らしい結果を残せる様になったんです」




今年5月ロシア勢として初めてヨーロッパの主要大会で優勝したCSKAモスクワ
下馬評を覆してUEFAカップの決勝でスポルティング・リスボンを3対1で下したのです
800万ユーロで獲得したブラジルの有望株バグネルラブの活躍も光りました
ロシア勢の決勝進出自体1972年のカップウィナーズカップ
レンジャースに敗れたディナモモスクワ以来という長い道のりでした




valery gazzayev
「本当に大きな栄冠だと思います。ロシアサッカーの将来的な発展の為にも励みになりました。現在トップリーグでプレーしている選手だけで無く、学校でサッカーをしている子供達にとっても良い刺激ですよ。UEFAカップの決勝でロシアのチームが優勝する瞬間をその目で見たんですからね。あんな風に決勝の舞台に立ちたいと今では皆が夢見ていますよ」




この変化のバックにあるのが石油関連の大企業です
1991年のソビエト連邦崩壊後勢力を拡大しました
例えば石油会社で富を築いたチェルシーのオーナーロマン・アブラモビッチ
2004年からCSKAモスクワに年間2000万ユーロもの融資を始めました



ライバルのスパルタク・モスクワもロシア最大の石油会社から支援を受けています
フェルナンド・カベナギを獲得したのはスパルタク
20歳のカベナギリーベルプレートで88試合に出場し55ゴールをあげた逸材です
バティストゥータ2世とも謳われるアルゼンチン期待の新星
移籍先はスペインかイタリアかと思われていましたが2004年8月、ロシア史上最高額の1200万ユーロでスパルタクへ
何が決め手だったのでしょうか?




fernando cavenaghi
「スパルタクが心から僕を必要としてくれているのが分かったんです。リーベルに対して最高の額を提示してくれたので決断しました。キャリアの新たな第一歩を踏み出す時には新しいクラブが、どれだけ自分を求めているのかを確かめるのは大事な事ですからね」




モスクワでの生活には慣れたもののピッチでは25試合で8ゴールと、まだ金額に見合う結果を残せていません
2対0と勝利したロストック戦ではスタメン落ちしました
リーグ22度の優勝を誇りロシアで最も成功しているスパルタクですが、最近は昨シーズンの覇者ロコモティフモスクワ、CSKA等に押され気味です
カベナギの獲得もかつての栄光を取り戻す為でしたが残り10試合で4位
首位のロコモティフに11ポイント差をつけられています




fernando cavenaghi
「優勝争いは熾烈です。各チームの実力が拮抗していますからね。ロシアに来て全く違うプレースタイルに急いで慣れなくてはいけなかったんです。今の所自分の出来には満足していません。でももっと良いプレーをしてゴールも決められますよ」




カベネギを切っ掛けに始まった大物移籍ブーム
ディナモモスクワは無機質肥料で財を成し、モナコのスポンサーでもあるアレクセイ・フェドリチェフ(Alexei Fedorychev)が新オーナーになり、3500万ユーロを費やしポルトから4選手を取りました
ポルトガル代表のマニシェコスティーニャギリシャ代表のセイタリディス、ブラジル人のデルレイです
監督はブラジル人のイヴォ・ウォルトマン(Ivo Wortmann)
優勝11回を誇る名門も昨シーズンは降格の危機にありました
最後の栄冠は1976年です




costinha
モナコ時代の知り合いだったオーナーから直接電話を貰いました。彼にはディナモをロシアナンバー1、ヨーロッパでも屈指のビッグクラブにするという素晴らしい計画があるんです。スタートしたばかりで時間が必要なのは分かっています。課題も山積みですが力になりたくて来たんです」




ただ現実は厳しい物でした。今年8月には3連敗
サタンモスクワ(Saturn)を1対0で下してようやくトンネルを抜け出します
前の監督は二人併せて16試合しか持ちませんでした
二の舞を避けるには結果が欲しいウォルトマン監督
しかし外国人選手も自分もシーズン途中に来たばかりで一夜にして強豪には成れないと弁解に必死です
ロシアリーグの会長でディナモのチーフエグゼクティブも務めるユーリ・ザバジンに聞きます




yuri zavarzin
「私達の今シーズンの目標はUEFAカップ出場圏内に入る事です。その為にはロシアリーグの5位以内に入る必要があります。シーズンの半分を過ぎた時点でまだ目標のポジションを確保出来ていませんが、それに向かって努力を続けていく気持ちに何ら変わりはありません」




外国人選手の加入で国内の若手が出場機会を失う心配は無いのでしょうか
FKモスクワに所属するロシア代表ドミトリー・キリチェンコはリーグきっての人気者です
26歳のストライカーは8ゴールをあげるレギュラー選手
ただ代表メンバーの中には苦しんでいる選手も居ます




dmitri kiritchenko
「外国人選手の問題は何もロシアに限った事ではありません。沢山の外国人選手がいる国では何処でも状況は同じですよ。代表チームに大きな影響が出る恐れはありますがロシア人以外をリーグから締め出す訳にもいきませんからね。どのクラブも力のある選手が欲しいんです。それに一流のメンバーと一緒にプレーする事がロシア国内の選手のレベルアップに繋がるかもしれません」




スター選手の加入やヨーロッパでの活躍にも関わらずスタンドの入りは今一つ
スパルタクとトルペド(Torpedo)モスクワのホーム、ルズニキスタジアム(Luzhniki)の収容人数は8万人ありますが普段は4分の一も埋まりません
強権的な警察を恐れた人々のスタジアム離れが進み、殆どのクラブが入場料収入を当てに出来ない状況です
ただロコモティフだけは例外
テレビ番組の人気司会者の話です




vassily utkin
「ロコモティフの新しいスタジアムはあらゆる層を惹きつけています。スタジアム内ではアメリカの炭酸飲料を始め、何でも売っているんです。ロシアでのサッカーのイメージは例えば映画等とは違いました。家族を連れて行ったり若い男性が彼女を誘ったりするのに適した場所とは思われていなかったんです。ロコモティフは元々調子が良くてもあまり人気が無いクラブでモスクワでも第5の存在でした。それが2004年にはリーグナンバー1の動員数ですからねぇ」




リーグの発展にはヨーロッパ主要大会でのさらなる活躍が不可欠
革命の進み具合を計る意味でもチャンピオンズリーグとUEFAカップでのロシア勢には注目です






PFC CSKAモスクワ
http://www.cska-football.ru/




ロコモティフ・モスクワ
http://www.lokomotiv.ru/




ディナモ・モスクワ
http://www.fcdynamo.ru/




スパルタク・モスクワ
http://www.spartak.com/




FCサターンモスクワ
http://www.saturn-fc.ru/




トルペド・モスクワ
http://www.torpedo.ru/




FCモスクワ
http://www.fcmoscow.ru/




ルズニキスタジアム
http://www.stadiumguide.com/luzhniki.htm





Jスポーツ
http://www.jsports.co.jp/program/info/8633.html