FUTBOL MUNDIAL #661●特集1:アノルトシス

●特集1:アノルトシス
キプロスリーグのアノルトシスと、選手兼監督のテムリ・ケツバイアをクローズアップ。

キプロス北部の港町ファマグスタ( Famagusta)は地中海に浮かぶ島国の様な数奇な運命を辿ってきました
1960年イギリスからの独立でギリシャ系とトルコ系の民族の対立が浮き彫りになります
その後トルコ軍が北キプロスに軍事介入し、ギリシャ系住民は南部へ追われました
ゴーストタウンと化したファマグスタ
しかし地元のクラブ、アノルトシスは50km離れたラルナカ(Larnaca)で活動を続けます
アンドレス・パンテリ会長です



andress panteli
「1974年に起きたトルコ軍の侵略の事は忘れていません。あの時は全てを手放して命からがら逃げるしかなかった。ラルナカではゼロからの出発でしたが、自分達のアイデンティティを失わない為にもクラブを存続させようと決意しました。他のクラブにも援助をお願いして何とかキプロスリーグでプレーを続けたんです」




現在も避難したままですが、ラルナカに出来た新スタジアムにはファマグスタの名前を残しています
クラブの人気者と言えばテムリ・ケツバイア
最初の入団は1991年、グルジアで最多優勝を誇るディナモ・トビリシ (Dinamo Tbilisi)から移籍しました
2度目が2002年、現在はプレーイングマネージャーです



temuri ketsbaia
キプロスへ来てアノルトシスでプレー出来たお陰で私の夢が叶いました。キャリアの中でも大きな栄冠の一つですよ。このクラブと出会っていなかったら私は夢を実現出来ませんでした。選手として成長させてくれて、今度は監督を務めるチャンスも与えてくれて本当にありがたいですね。今では監督としての役割が中心です。チームとの関係や、選手の私に対するリアクションが一番気になりますね」




現在情熱的に指導を行っているケツバイア
ケツバイアは97年ボスマンルールを使いギリシャのアエク・アテネ(AEK Athens FC)からイングランドニューカッスルへ移籍します
3シーズンプレーしたニューカッスルでは最後まで諦めないガムシャラな姿勢でゴールネットを揺らし、タインサイド(Tyneside)のサポーターを虜にしました



temuri ketsbaia
「凄く意味があって興味深い経験だった事は間違いありません。イングランドでのプレーは私にとってキャリアのハイライトでしたからね。イングランドはずっとやってみたいと思っていた場所だったんです。だからニューカッスルの為にプレーするチャンスを得られて本当に嬉しかったですね」



サポーターからは大人気でしたがルート・フリットが監督だった時代は控えに甘んじました
ボルトン戦では満員のサポーターと中継用のカメラの前で不満をあらわにした事もありました
(VTRで見るとまずゴール裏にユニフォームを投げ入れた後、ゴール裏の看板を3度蹴ってるな)


temuri ketsbaia
イングランドの人はあのシーンを覚えているはずですよ。私の力を疑う人達にこれ以上無い形で答えを出せました。入団した時に自分はチームでもトップクラスの選手だと思っていたのに、それを証明する場さえ与えられずに、使われない理由も分かりませんでした。だからゴールを決めた時にはそれまで抱えてきたイライラやガッカリした気持ちを発散するなら今だって気がしたんです」




その後イングランドウォルバーハンプトン(Wolverhampton Wanderers F.C.)、スコットランドのダンディ(Dundee F.C.)でプレーした後、ケツバイアは2002年の夏に心の故郷アノルトシスへ復帰しました
パンテリ会長は監督としての手腕にも期待しています



andress panteli
「彼の様な人間は滅多にいませんからね。凄く良い奴ですし、私達もようやくあの個性に慣れてきましたね。人はそれぞれ違ったキャラクターを持っているものです。ケツバイアの場合はどんな事に対しても誇りを持って取り組んで、クラブを愛していて人が良い。そういう所がとても魅力的だと思いますね」



プレーイングマネージャーとして早速結果を出しました
初めてフルシーズン指揮を執った04−05シーズン、クラブ史上初のリーグ制覇を達成します
さらにその3ヵ月後チャンピオンズリーグの予選2回戦では大方の予想を裏切って、トルコのトラブゾンスポル(Trabzonspor)を下します
キプロス勢がトルコ勢に勝ったのは史上初めての快挙でした
今シーズンスタートダッシュに失敗しました。開幕2試合で1分1敗です
新しいボスがこのまま黙っているはずがありません
38歳になっても現役引退は考えていない様子です



temuri ketsbaia
「先の事はまだ分かりません。今はアノルトシスで仕事をしていますし、選手としてプレーも続けています。だから何の不満もありませんね。この先状況が変わったらその時は考えますよ。今の所はこのクラブで目標を叶える為に頑張っているんです。もっと高いレベルで監督に専念しても良いと思える日がきたら、そういう道を選ぶんでしょうけど」



テムリ・ケツバイアなら納得出来る答えが出せるはずです






Anorthosis Famagusta FC
http://en.wikipedia.org/wiki/Anorthosis_Famagusta




Temuri Ketsbaia
http://en.wikipedia.org/wiki/Temuri_Ketsbaia

ケツバイアハイライト 最初に看板蹴りの場面もあり




Famagusta
http://en.wikipedia.org/wiki/Famagusta




Larnaca
http://en.wikipedia.org/wiki/Larnaca




FC Dinamo Tbilisi
http://en.wikipedia.org/wiki/FC_Dinamo_Tbilisi






FUTBOL MUNDIAL #659●特集2:キプロスサッカー事情
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20060830





Jスポーツ
http://www.jsports.co.jp/program/info/14591.html