FUTBOL MUNDIAL #654●特集2:南アフリカ

●特集2:南アフリカ
一足早く2010年W杯開催地、南アフリカの準備の様子を取材。

joseph s. blatter
「2010年のワールドカップ開催地は南アフリカです」



2010年のワールドカップでホスト国に選ばれ歓喜に沸いた南アフリカ
この栄誉をアフリカ勢で初めて手にしました



nelson mandela
「私達南アフリカは投票の結果を驕らず謙虚に受け止めなければいけません。何故なら成功を手にした者もそうでなかった者も、皆平等だからです」



開催地に選ばれてから2年、南アフリカの関係者はドイツへ向かいました
自国をアピールするのは勿論、ワールドカップの現状を把握するのが目的です
特にセキュリティ問題には熱心でした
ドイツ治安当局の責任者に聞きます



reiner piper
「ドイツ政府の招きで南アフリカの代表団が何人か来ていて、色々な情報を集めようと動いていましたねぇ。警察関係者も居たのでワールドカップでの私達のセキュリティ対策や作戦には特に関心を持っていた様に思います。他にも国会議員もいらして、全般的なセキュリティの在り方や考え方を学ぼうとしていましたよ」




アフリカ勢には残念な結果に終わったドイツワールドカップ
参加した5カ国でベスト16に進めたのはガーナだけで、2010年に向けて出場枠の増加は期待できません
それでも南アフリカのターボ・ムベキ大統領は強気です



thabo mbeki
「2010年のワールドカップの見所はアフリカ勢が優勝トロフィーを掲げるかどうかです」




ドイツでは2010年用の新しいロゴもお披露目されました
南アフリカなら19度目のワールドカップを成功させられるとFIFAも自信を覗かせます




joseph s. blatter
「今回のワールドカップで良かった点をドイツとFIFA協力して運営したドイツ組織委員会から継承していきたいと思っているんです。例えばスタジアムだけでなく、ファンフェストと呼ばれるパブリックビューイングに大勢の人が集まったのは良かったですねぇ」




まずは開催都市となる9都市10会場での準備が先決
ケープタウン(Cape Town )、ポート・エリザベス(Port Elizabeth)、ダーバン(Durban )、ネルスプルイト(Nelspruit )では新スタジアムを建設する予定です


残りの6会場
ルステンブルグ(Rustenburg )、 ブルームフォンテイン( Bloemfontein )、プレトリア( Pretoria)、 ポロクワネ( Polokwane)そしてヨハネスブルグJohannesburg )の2会場は改装が必要
ヨハネスブルグのエリスパーク(Ellis Park)は標高2000mとプレー環境も様々です



2001年エリスパークでは南アフリカサッカー史上最悪の惨事が起こりました
サポーターが殺到した事で43人が死亡し、158人が怪我を負いました
セキュリティ対策や入場制限の不備も指摘されました


この大惨事を教訓として、FIFAの基準を満たすスタジアムになったのは、南アフリカではまだ3箇所だけです
ヨハネスブルグのサッカーシティスタジアム(Soccer City Stadium)は開幕と決勝の舞台です
現在は8万人収容ですが、改装で9万4700人に増える予定です



大会組織委員会とFIFAのオフィスはスタジアムはスタジアム付近に建設中です
大会組織委員会の委員長は南アフリカサッカー協会の元CEO、ダニー・ジョーダン
準備が間に合わないとの報道に反論します



danny jordaan
「ロンドンのウェンブリースタジアムも予定日に間に合わない位ですから、私達も十分ケアーしていますよ。スタジアムの建設については綿密な計画を立てています。デザインもプランニングも最終決定していますし、予算も承認済みです。後は今年の後半に工事がスタートさせるのを待つだけですよ。完成は2008年の12月になります」



FIFAは今年初めに現地に拠点を設けました
本大会の4年前から事務所を開くのは初めて
4人のチームを率い南アフリア側と共同で準備を進めているのが、オーストラリア出身のマイケル・パーマーです



michael palmer
組織委員会はこれまでの所前倒しで物事をを進めています。この先スムーズにいかない事も出てくるでしょうが、彼らには大会を成功させようという強い思いや情熱があります。その気持ちがあれば世界からのゲストを暖かく迎えて、スタジアムの準備も整いますよ。2010年には嬉しいサプライズをお届け出来ると思います」




空路は厳しい国際基準をクリアし、幹線道路も整っています
都市間の移動に困ることは無さそうですが、気になるのがヨハネスブルグからプレトリアを結ぶ100kmの国際道路
南半球で最も混雑していると言われ、渋滞は避けられません
鉄道も様々な都市を結んでいるものの、老築化も見られます
政府はヨハネスブルグ-国際空港-プレトリアを結ぶ特急の完成を急いでいます
実現すれば渋滞の緩和にも役立つでしょう


運輸省のスポークスマン、マサバサ・モコニャマンの話です



mathabatha mokonyaman
「2010年のワールドカップのピーク時にも対応出来る様、交通システムを整備しようとしている所です。南アフリカに来てくれた人達に観光を楽しんで欲しいんです。道路は安全に目的地までスピィーディに到達出来る様にしたいですね」



報じられている程酷くは無いものの犯罪の多さも懸念材料です
摩天楼が美しいヨハネスブルグですがアパルトヘイト廃止後、犯罪率が増加
多くの企業が移転し空きビルも目立ちます
ダウンタウンでは被害者になる割合も高く凶悪犯罪も珍しくありません
ただ95年のラグビーワールドカップや98年のクリケットワールドカップ期間中は目立った事件は起きませんでした




danny jordaan
「芸術、文化等の施設、銀行や証券取引所その他の公共機関もヨハネスブルグダウンタウンに戻すという計画を進めているんです。成果は現れてきていると思いますし、2010年までには揺ぎ無い物にするつもりでいますよ」



国内の3大スポーツの中でもラグビークリケット以上に人気のあるサッカー
人種間の垣根を無くすのにも有効です
国内リーグも盛り上がり、多くのサポーターを集めています


ただ代表チームはホスト国を務めた96年のアフリカネーションズカップでは優勝したものの、その後は低迷しています
エジプトで行われた今年のネーションズカップではグループリーグで敗退
過去2大会連続で出場していたワールドカップでも予選で姿を消しました


サッカー協会のレイモンド・ハック会長の見解は?



raymond hack
「本当にガッカリしてショックでした。でも最初からやり直せる訳で災い転じて福となるかもしれません。痛手だとしてもこの世の終わりでは無いし、同じような思いをしたチームもありますしね。それにフランスは98年に優勝して、コリアジャパンでは両国共予想以上の活躍でした。南アフリカがファイターだって事をお見せしますよ。アフリカ勢の底力もね」



準備は順調、観光名所は目白押し
2010年には沢山のサポーターがその魅力に触れるでしょう
ワールドカップは同じ国の中でそれぞれ違う言語を話す11の民族の融合にも役立ちます
彼らはアパルトヘイト政策の下、社会的にも文化的にも分断されてきました



FIFAにとってアフリカでのワールドカップ開催は収入ダウンの不安と隣り合わせでした
しかしそれは杞憂に終わった様子です




joseph s. blatter
「世界各国のテレビ局との契約や世界中の企業との経済的な提携、つまりスポンサー契約に関しては全体の70%以上は決まっているも同然の状態です。ですから南アフリカでの開催の方がヨーロッパでの大会よりも多くの収入を見込める位なんですよ」




ワールドカップによる南アフリカへの経済効果は凡そ35億ドル
16万の雇用を創出する見通しです
また数十億人がテレビ観戦し、サポーターやメディア等300万人が現地へ足を運ぶと予想されています
ホスト国としての腕の見せ所です






南アフリカの開催地
http://www.fifa.com/en/comp/FWC/tournament/0,6416,FWC-2010-20,00.html